【3月25日 AFP】ロシアの首都モスクワのコンサートホールが武装集団に攻撃され130人以上が死亡、数十人が負傷した22日の事件をめぐり、国民の間に衝撃と悲しみ、そして怒りが広がっている。同国で起きた襲撃事件としては過去20年で最多の犠牲者を出した。

 一方、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領がウクライナの関与を示唆したことをめぐっては、市民の反応は分かれている。

 事件では、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が重ねて犯行声明を出している。銃撃する戦闘員の姿を撮影した生々しい動画も公開された。

 米ホワイトハウス(White House)は23日、IS単独の犯行で、「ウクライナは一切関与していない」との見方を示し、ウクライナ政府も関与を否定した。

 だが、プーチン氏はISの犯行声明についてはコメントせず、当局が拘束した実行犯4人はウクライナに逃亡しようとしていたと主張している。

 モスクワ市内でAFPの取材に応じた医学生(22)は、「ウクライナが関与していたという説は信じられない」と語る。両親はイスラム教徒だと言い、また、事件が起きたコンサート会場にもたびたび訪れていると話した。

 一方、ウクライナ関与説を捨て切れない人々もいる。

 商店の店主だという男性(52)は、「誰が黒幕なのかは分からないが、ロシアの敵、プーチンの敵対勢力が(ロシアの)不安定化をもくろんでいるのは確かだ。自分たちは政府に守ってもらえるのかという不安が広がり始めている」と話した。

 弁護士の女性(35)は、西側諸国が今月7日に警告を出していたことを指摘し、「米国と英国は自国民に注意を呼び掛けていた」「問題は、なぜ、この国の保安当局は把握していなかったのかだ」と問い掛けた。

「今は、気を付けなければならないという意識がある。地下鉄に乗るのも危ないと思う」と、前述の医学生は言う。

 ただ、政府の説明自体は受け入れ難いとしながらも、ロシア社会はこの襲撃事件を経て団結するだろうとし、「このような事件が起きると、共に障害を乗り越えようと私たち国民は一つになるはずだ」と続けた。(c)AFP