【5月2日 AFP】英国の考古学者チームは2日、復元した7万5000年前のネアンデルタール人の女性の顔を公開した。考古学者らは、ネアンデルタール人が野蛮で洗練されていないという認識を改めようとしている。

 2018年にイラク北部クルド人自治区にあるシャニダール洞窟(Shanidar Cave)で発見された頭蓋骨はネアンデルタール人の40代女性のもので、地名をとって「シャニダールZ(Shanidar Z)」と名付けられた。

 発見されたのは頭蓋骨と上半身の骨格で、遺体は垂直に立てられた巨大な石標の下に寝かされた状態だったとみられる。

 下半身の骨格は1960年に米考古学者ラルフ・ソレッキ(Ralph Solecki)氏が10人分以上のネアンデルタール人の骨を発見した際に発掘されたと考えられている。

 今世紀発見されたネアンデルタール人の中では最も保存状態が良いとされるシャニダールZの頭蓋骨はおそらく死後、比較的間もない時期に石に押しつぶされ、厚さ2センチに圧縮されていた。

 シャニダールZを発見した英ケンブリッジ大学(Cambridge University)の古人類学者エマ・ポメロイ(Emma Pomeroy)氏は発見時を振り返り、「興奮した」と同時に「恐ろしかった」と語った。

 発掘作業では骨格と周囲の堆積物が崩れないよう硬化剤で補強し、小さなブロックに分けてホイルに包み、土から取り出した。

 その後、米動画配信大手ネットフリックス(Netflix)のドキュメンタリー番組「ネアンデルタール人の秘密(Secrets of the Neanderthals)」のために顔を復元する第一歩として、保存修復士のルシア・ロペスポリン(Lucia Lopez-Polin)氏が200個以上の断片をつなぎ合わせ頭蓋骨を再現した。

 ポメロイ氏は「3Dジグソーパズルのような」作業で、断片は「紅茶に浸したビスケット」のように非常に柔らかかったと説明した。

 さらに、再現された頭蓋骨は3Dプリントされ、オランダの古生物学者アドリー・ケニス(Adrie Kennis)氏、アルフォンス・ケニス(Alfons Kennis)氏の兄弟がBBCスタジオ・サイエンス・ユニット(BBC Studios Science Unit)制作のドキュメンタリーのために、人工筋肉と人工皮膚を何層も重ねて顔を復元した。

 ポメロイ氏によると、ネアンデルタール人の頭蓋骨は現生人類のものとはまったく異なり「目の上の骨の隆起(眼窩上隆起、がんかじょうりゅうき)が大きく、顎先がない」点が特徴的とされる。

 だが、再現された顔からは「そうした違いが、実際にはあまり明確でなかったことがうかがえる」とし、また「現在生きている人間はほとんど全員、ネアンデルタール人のDNAをある程度受け継いでいる」と述べ、ネアンデルタール人と人間の交雑に言及した。(c)AFP/Helen ROWE