【4月20日 AFP】アルゼンチンは深刻な経済危機に陥り、国民の10人に6人が貧困状態にあるにもかかわらず、上院で議員の給与を170%引き上げる法案が挙手による採決で可決され、反発を呼んでいる。

 採決は18日夜、2分足らずで終わり、72人の上院議員の月給は、最低賃金約230ドル(約3万6000円)のおよそ20倍に当たる約400万ペソ(約70万9000円)となる見通し。

 緊縮財政を進めるハビエル・ミレイ(Javier Milei)大統領に忠実な議員らは採決に出席したが、賛成はしなかった。合意が得られない時の慣例となっている議員一人一人を呼び出しての記名投票の実施も求めなかった。

 首都ブエノスアイレスで衣料品を販売するガブリエラ・キロガさん(31)はAFPの取材に対し、「クレージーだ。われわれの給料に見合っていない」「どの店も全く売れていない」と嘆き、路上生活者は増える一方だと語った。

 ミレイ氏はアルゼンチン経済の衰退に歯止めをかけると表明し、燃料費や交通費への補助金の停止、数万人規模の公務員削減など、さまざまな緊縮政策を打ち出している。こうした動きは国民に打撃を与え、バスの運賃は3倍近く値上がりし、炊き出しへの補助も打ち切られた。

 上院での採決が公になると、ミレイ氏はX(旧ツイッター)で上院議員らを「身勝手」で「偽善的」だと非難した。

 ルイス・カプト(Luis Caputo)経済相も、この結果は「恥」だと糾弾した。

 上院の与党は声明で、給与引き上げを撤回する法案を提出する方針を示した。議会では、ミレイ氏が提案した一連の財政緊縮策についても審議している。(c)AFP