【4月14日 AFP】パキスタン最大の都市カラチ(Karachi)に英植民地時代からある刑務所には、農村生活を描いた壁画が飾られている。殺人や誘拐で服役している受刑者たちによる作品だ。

 刑務所長によると、更正のための美術・音楽プログラムの受講者の中には、地元の芸術団体が支援する展覧会で数千ドルで作品が売れる受刑者もいる。

 所内のアトリエでAFPの取材に応じたモハメド・イジャズ受刑者(42)は「刑務所に入る前は無責任で未熟な、別の人生を送っていた。でも、ここに入ってから、人生の本当の意味を見つけた。人生は色彩に満ちていて、色そのものが語っているのだと教えられた」と語った。

 イジャズ受刑者は誘拐・拉致関連の罪について詳しく語ろうとはしなかったが、25年の刑期の約半分を終えたところだという。

 現在は刑務所内で描いている馬の絵で多額の収入を得ている。売り上げは母親のメッカ(Mecca)巡礼や妹の結婚式の資金にもなった。「最初、家族は私がアーティストになったことを信じなかった。でも展覧会で絵を見て、喜んでくれた」。今では他の受刑者に絵を教えてもいる。

 このアートプログラムは2007年、長期刑の受刑者や死刑囚の更生を目的としてカラチ中央刑務所で開始された。受刑者はアラビア語、英語、中国語などの外国語や、刺しゅうやビーズ細工なども学ぶことができる。

 幹部職員のアンマド・チャンディオ氏は「建設的な活動に参加させることで、受刑者たちは磨かれる」とAFPに語った。「どんな罪、どんな法律違反を犯したのか、過去を振り返る助けになる」

 作品の販売による利益は「すべて受刑者のもの」となる。

 パキスタン全土の刑務所はしばしば危険なほどの過密状態にあり、水や衛生用品、食料へのアクセスが限られているが、主要都市の中央刑務所は全般的に財政状態に余裕がある。

 メフタブ・ザキール受刑者(34)は5年前に殺人で有罪を言い渡され服役中だが、家族はいまだ経済的に同受刑者を頼りにしている。「ここでの時間は無駄ではない。少なくとも何かを学んでいる。絵が完成すると気分がいいし、少なくとも何かができるという自信になる」  

 映像は2023年12月撮影。(c)AFP