【4月25日 AFP】イスラム組織ハマス(Hamas)による昨年10月7日の奇襲で両親を亡くしたイスラエル人実業家マオズ・イノン(Maoz Inon)さん(49)は、報復ではなく平和を訴えている。

 イスラエル北部シェファアムル(Shefa Amr)で行われた小規模な平和デモで、イノンさんは「復讐(ふくしゅう)は望んでいない」とAFPに話した。デモには、ユダヤ人だけではなくパレスチナ人も参加していた。イスラエルとハマスの戦闘が始まってからは、こうしたデモが行われること自体が異例だ。

 ガザ地区に程近い集落ネティブハアサラ(Netiv Haasara)に住んでいた母ビルハさんと父ヤコビさんは、ハマスからロケット弾による攻撃を受け、自宅で死亡した。イノンさんは、両親を亡くした当初は、平和と許しを呼び掛けるのは簡単ではなかったと認めた。「だが、こうした呼び掛けをするのは私の両親のレガシー(遺産)だ。未来は、より良いものになる」と話した。

「戦争はイスラエル国民に安心も安全保障も、もたらさない。もちろんパレスチナ人にもだ」と訴え、「血と恐怖の応酬は100年以上続いている」と続けた。

 イスラエルの公式発表をまとめたAFPの統計によると、昨年のハマスによる奇襲でイスラエルでは約1160人が死亡した。大半は民間人だった。

 一方、ガザの保健当局によると、イスラエルが続ける報復攻撃では3万以上が死亡した。大半は女性と子どもだとされる。

 両親を亡くしてからのイノンさんは、イスラエルはもちろん、欧州にも足を運び、パレスチナ人との対話を行ってきた。中には、「父親や兄弟、一族全員」を亡くしたガザ出身者もいる。